胎動
そう言ってあたしの頭にポンッと手を乗せる透。


この温もりが消えてしまうのだけは嫌だった。


あたしたちだけでも怖がらず、笑顔でいよう。


そう思った矢先の出来事だった。


「昨日から田中が行方不明なんだってさ」


クラスに入った瞬間聞こえてきた声に、あたしは固まってしまっていた。


「行方不明って? 連絡取れないのかよ?」


「うん。学校が終わってから帰ってないみたいだな」


まさか、あたしの産んだソレがついに動き出したんだろうか?


そんな不安が膨らんでいく。


「大丈夫。きっと無関係だから」


透の言葉にもあたしは頷くことができなかったのだった。
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