胎動
☆☆☆

クラスメートの田中君がいなくなったことは、あっという間に知れ渡っていた。


田中君と仲の良かった子たちが連絡を取ろうとしても、一切繋がらない。


午後になって入って来た情報では、田中君の荷物だけが通学路の途中で見つかったということだった。


「鞄は通学路の途中にある川の中から見つかったんだって」


放課後、梓がそう言ってきてあたしは曖昧に頷いた。


嫌な予感ばかりが胸をよぎるので、あまりその話はしたくなかった。


「ごめん、今日は早めに帰りたいから」


そう言って梓から離れる。


教室を出ようとしたとき、今朝の夢が鮮明に思い出された。


クラスメートたちを次々に食べるソレの姿が、目の前にあるかのような感覚だった。
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