胎動
「ねぇ友里」


そう声をかけられて、驚いて振り向いた。


そこには真剣な表情をした梓が立っていた。


「な、なに?」


胸をなで下ろしてそう聞く。


「最近、なにか隠してない?」


「え?」


そう聞かれて、あたしはすぐに誤魔化すことができなかった。


10年前の行方不明事件、隣県の行方不明事件、そして、田中君の行方不明事件……。


すべてのことで頭が一杯だった。


「叔父さんと叔母さんがいなくなったことと関係あるの?」


その質問にあたしは黙り込んでしまった。


2人がいなくなって落ち込んでいると思われていた方がいい。


けれど、どう返事をすればいいかわからなかった。
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