胎動
夕夏の友達も、まだ戻ってきていない。


「それは警察が調査中だ」


先生はそう言い、早々に話を打ち切ってしまった。


あまり大事にしたくないのが見て取れた。


「この前、友達の家のお爺ちゃんもいなくなったんだよね」


「行方不明ってこと?」


「うん。お爺ちゃんまだ元気だったのに帰って来なくなったの」


「それって田中君や佐々木君の事件と関係してるのかな?」


休憩時間に聞こえて来るそんな会話にいたたまれなくなり、あたしは廊下へ出た。


窓を開けて大きく息を吸い込む。


すべての行方不明事件が自分のせいじゃないかと思えてきてしまう。


「大丈夫?」


あたしの様子を気にして梓がそう声をかけてきた。


「うん……」


返事をするものの、あまり大丈夫ではなかった。
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