胎動
さっきまで晴れていた空が徐々に曇りはじめていた。


分厚くて黒い雲が悪魔山の上を覆っているのがみえた。


「フェンスが壊されてる」


山をグルリと囲んでいるフェンスの一部が、大きく破損しているのがわかった。


まるで、両手でフェンスを押し広げたような形に開いていて、思わず寒気がした。


ここまで来て弱気になっちゃダメだ。


そう思って自分を奮い立たせる。


「行こう」


そう言う透に頷き、あたしと梓も足を進めたのだった。
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