胎動
1度目にあたしが見たものは悪魔が見せた幻想だったのかもしれない。


2度目に訪れた時に見えなかったのは、ここへ来ても意味がないと思わせるため。


そして3度目の今日、初めてこの現実が見えたのかもしれない。


「この瓦礫を調べてみようか」


そう言って梓が祠に揺れた瞬間だった、雨も降っていないのに雷鳴が轟いた。


体中に響き渡るような音に悲鳴をあげ、その場にうずくまる。


押し込めていたハズの恐怖心が体全体から湧き上がってきた、その時だった。


闇の中に更に黒い影が現れたのだ。
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