胎動
☆☆☆

周囲の田畑が見えた時、あたしは戻って来たと感じられた。


「これだけじゃ悪魔は死なない。だけど、音楽だけで効果はあったから……」


「この山を、もっと楽しい山に変えて行けばいいんでしょ?」


あたしは照平の言葉に続けて言った。


悪魔山と呼ばれ、みんなに恐れられてきた山。


そんなイメージを壊すようなことを考えればいいんだ。


フェンスを取っ払って、人の行き来を再開させれば楽しいことも増えるはずだ。


簡単じゃないけれど、きっとできる。


「手始めにラジカセでも借りてきて、ずっと音楽を流しとくか」


息を切らしながら、透が冗談っぽくそう言った。


「それいいね。一番簡単にできる」


少し余裕が出て来た梓もそう返事をした。
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