胎動
「こんなに綺麗な山じゃん」


あたしはそう呟いた。


サイトに載せられている悪魔山は、どれも物々しい雰囲気が漂っていた。


怖い噂が立っているから、わざとそう言う風に撮ったのだろう。


あたしは悪魔山の綺麗な様子をスマホカメラに収めた。


家に戻ったら、これをSNSに投稿しよう。


「ねぇ、このフェンスを破ったのって照平?」


ふと立ち止まり、梓が言った。


「え? 俺が来たときにはもう破れてたぞ? お前たちじゃなかったのか?」


照平が瞬きをしてそう聞いて来た。


あたしたちが来た時にももう、フェンスは破れていた。


その後照平が来たのなら、その前に先客があったということか……。
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