胎動
「……ねぇちょっと待って」


恐れてはいけない。


恐れれば悪魔に力を与えてしまう。


それでも、あたしは背後に寒気を感じた。


「今ここにいたのはあたしの産んだ悪魔だった。でも、悪魔は一体じゃないよね?」


願いを聞き入れるために産れた悪魔。


そして、本体がいるはずだった。


山に入ったときに見たのは本体ではなく、赤子の一体……。


「ねぇ、やっぱりおかしいよ。このフェンスだってさぁ」


そう言った次の瞬間。


梓の頭が爆発するように、音を立ててはじけ飛んでいたのだ。
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