胎動
あの2人が、恐ろしくて……!


手の甲で涙をぬぐって立ち上がった。


大きく呼吸を繰り返して、胸の気持ち悪さを払拭する。


フェンスに手をかけて体重を支えた。


今から帰ったら何時になるだろう?


どのくらいの時間をかけてここまで来たのかわからなかった。


ここまで歩いてきた記憶が全くないのだ。


「うぅっ……」


情けない声と共に、家へ向けて歩き出した。


「こっちへおいで」


数歩歩いたところでそんな声が聞こえてきて、あたしは周囲を見回した。
< 28 / 231 >

この作品をシェア

pagetop