胎動
☆☆☆

今日の出来事はとても口で説明できるものじゃなかった。


いくら心配してくれる透相手でも、うまく言えない。


すべてが夢だったのではないかと今でも思うくらいだ。


とにかく怪我はなかったし、無事に戻って来ることができた。


そのことに安堵し、あたしは深い眠りについたのだった。


夢の中で、あたしは山の中に立っていた。


鎖の外れた祠の前にいて、咄嗟に逃げようとする。


しかし次の瞬間、周囲が暗闇に包まれた。


足を止めて様子を伺っていると、木々が揺れて鳥が逃げだして行く。


嫌な予感に胸の奥から気持ち悪さがせり上がって来る。


その時だった。


祠の上に立つ大きな影が、あたしを見下ろしていることに気が付いた。


「嫌……」
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