胎動
逃げたくても足が一歩も動かない。


指先の一本すら、動かす事ができなかった。


影の視線にからめとられ、ただ激しく呼吸を繰り返す。


その時。


影があたしめがけて突撃してきた。


「いやああああ!」



悲鳴をあげた瞬間、目が覚めていた。


「友里、大丈夫か?」


心配そうにあたしの顔を覗き込む透がいる。


あたいは荒い呼吸を繰り返して部屋の中を見回した。


ここは透の部屋だ。
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