胎動
☆☆☆

また、夢を見ていた。


狭い、物置の部屋の中にあたしが1人で立っている。


あたしは笑みを浮かべて自分のお腹で手を当てている。


その表情は夕夏がスマホで見せてくれた、あの女の子にそっくりだ。


その瞬間、あたしのお腹がどんどん大きくなり始めたのだ。


見る見る膨らんでいくお腹に、あたしは笑みをたたえたまま動かない。


夢の中にいる自分は冷静な顔をしているのに、夢を見ているあたしは焦っていた。


なにがどうなってるの?


このまま、あたしのお腹の中からもあの化け物が出て来るの?


長い指先でお腹の肉をかき分けて、顔を出すの?


そう思った瞬間、飛び起きた。
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