胎動
なくなっている
家から悪魔山へは徒歩で1時間かかることがわかった。


あの日、無意識の内にここまで歩いたなんて、やっぱりおかしな出来事だった。


「やっと到着した……」


お腹の重たさもあり、到着したときには息が切れていた。


何度も休憩を挟んで来たけれど、背中にはじっとりと汗を書いている。


あたしはフェンス越しに悪魔山を見上げた。


こんな山に登っただなんて信じれない。


このフェンスだって超えることができるかどうか……。


そう思いながらも、あたしはフェンスに両手をかけていた。


鞄は地面に投げ捨て、ポケットにスマホだけ残して登りはじめる。


妊婦がこんなことをするなんてと怒られそうだけど、そんなこと気にしている場合じゃなかった。

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