胎動
☆☆☆

まだ時間が早かったため保健室は開いていなかったが、透が先生を呼んで開けてもらった。


なにもかもしてもらって、申し訳ない気分になる。


あたしは保健室のベッドに横になり、大きく息を吸い込んだ。


部屋のマットよりも心地よくて、すぐ眠りにつけそうだ。


廊下では透と先生がなにか話をしている。


もしかしたら、あたしが家で休めない理由を説明してくれているのかもしれない。


色々な人に心配をかけて申し訳ないな……。


そう思い、寝返りを打った。


ベッドの横には丸椅子が一脚置いてあり、透はそこにあたしの鞄を置いてくれていた。


その鞄をぼんやりと見つめていると、不意にゴソリと音がして動いたのだ。


ハッとして上半身を起こし、鞄を見つめる。


……気のせい?


そう思った時、再び鞄が動いた。

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