胎動
内側から押されたような動き方だ。


あたしは手を伸ばし、自分の鞄を膝に置いた。


持ち上げるとさっきまでと違ってズッシリとした重さを感じる。


「一体なに……?」


そう呟いて、鞄のチャックを開けた。


その瞬間、ソレがこちらを見上げているのがわかった。


白い眼に赤い瞳孔。


ジッとこちらを見つめているソレは、昨晩見た時よりも大きくなっている。


「やっぱり、いたんだ……」


目が合った瞬間息が詰まったが、すぐに冷静になった。


ソレを見つめていると、なんとなく愛しさが込み上げて来る。


「いつの間に鞄に入ってたの?」


そう聞くと、ソレは小首を傾げた。

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