胎動
その様子が愛らしくてほほ笑んでしまう。


ソレがなんであれ、自分のお腹から生まれた子供であることに間違いはなかった。


生まれてくるまでは恐怖心しかなかったが、こうして対面してみると守るべきものに見えてきた。


これが母性本能なのかもしれない。


「口の周りになにかついてる」


そう言い、ソレの口へと手を伸ばす。


ネットリとした皮膚に赤いなにかがくっついている。


ぬぐい取ってみてもなにかわからず、あたしは鼻に近づけてみた。


鉄の匂いだ。


「もしかして血?」


そう聞くと、ソレは頷いた。


マットに点々と血がついていたことを思い出す。


あれはあたしの血だったはずだ。


だとしたら……。

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