胎動
予想よりも早く出てくることになったソレは、人間でいう未熟児かもしれない。


沢山食べさせて、大切に育てないと……。


そんな風に考えて、ハッとした。


あたしはもう、ソレを育てる気でいるのだ。


自分の考え方に驚きながらも、それは当然だと考える自分もいた。


だって、あの子はあたしが産んだのだ。


あたしが責任をもって育てないと、誰が育てるの?


ソレは、母親にしか見えないと書いてあった。


つまり、あたしにしか見えないのだ。


そう思うと、もうほっとけなかった。


両親の愛情を途中から知らずに育ったことが、余計にそう思わせた。


「大丈夫だよ。あなたを辛い目には合わせないから」


あたしは鞄へ向けてそう言ったのだった。
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