胎動
☆☆☆

それから少し眠って目が覚めた時、保健室の中に1人の生徒がいることに気が付いた。


「体育の授業で怪我しちゃって」


「随分血が出てるわね。すぐ手当てしなきゃ」


カテーンの向こうからそんな声が聞こえてきて、あたしは体を起こした。


スマホで時間を確認すると、1時間目が終わった頃だった。


まだ少しフラフラするけれど、朝よりは体調も戻ってきているのがわかった


鞄へ視線を向けると、いつの間にかソレがチャックを開けて顔を出している。


こちらを見て微かに笑っているように見えた。


「お前は賢いね。自分でチャックを開けられるんだ」


内側から開けるなんて、簡単じゃないだろうに。


そう言ってソレの頭を撫でた。
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