胎動
手にネットリとした液体が絡み付くけれど、気にならない。


「大丈夫。ちゃんと育ててあげるから」


小声で言っていたつもりだけれど、先生に聞こえてしまっていたようだ。


「深澤さん、目が覚めた?」


そんな声と同時にカーテンを開けられる。


「まだあまり顔色がよくないわね。これ、鉄分補給のサプリだけど、飲む?」


先生が小瓶と水の入ったコップを用意して、持って来てくれた。


鞄の中からソレが顔をのぞかせているが、先生は全く気が付かない。


「ありがとうございます」


サプリとコップと受け取り、礼を言う。


「今日は1日ここでゆっくりしてなさい」


そう言って、来ていた生徒と2人で保健室を出て行く音が聞こえて来た。
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