殺戮合宿〜モンスター〜
「どうして先生には見えないんですか!」


そう言い、ついに祐里が泣きだしてしまった。


「先生もみんなのことをわかりたいと思ってる。この合宿自体が悪かったのか? どうしてこうなった?」


浅野先生は頭を抱えてうめき声を上げた。


「俺たちは嘘なんてついてない!」


俊和がそう言うが、見えない人間に届く言葉ではなかった。


浅野先生は自分にも原因があったのではないかと、悩んでいるのだ。


「先生――」


あたしが声をかけようとした、その時だった。


スマホが震えて兄からの着信を知らせた。


「もしもし、お兄ちゃん?」


『あぁ、今近くに来たんだけど、なかなか合宿所が見えないんだ』


「バスが停車した広間にいるの?」


『そうだ。俺の車じゃそこまで行けない』


「わかってる。すぐに行きたいけど、でも……」


今は警察が来るのを待っている状態だ。


勝手な行動は許されないだろう。


あたしは浅野先生へ視線を向けた。


先生は左右に首をふる。
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