殺戮合宿〜モンスター〜
☆☆☆

今日はみんなどこか上の空だった。


どんなことをしていても、昨日の光景が目に浮かんできてしまう。


「セリフ、どうだ?」


浅野先生にそう声をかけられたので、あたしは左右に首を振った。


今回の作品は小道具も衣装も必要ない。


だから浅野先生が心配なのは、あたしと俊和のセリフだけのようだ。


「どうした。覚えるのは苦手か?」


「そうじゃないんですけど……」


そう言い、口ごもる。


昨日見た光景のせいで、なかなか集中して覚えることができないのだ。


「岩岡も調子が悪そうだったしなぁ。気分転換に昼休憩を長くするか」


浅野先生がみんなへ向けてそう言った。


途端に申し訳ない気分になってしまう。
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