ファイヤークイズ
あたしは光男の声が聞こえないフリをした。


幸平も理恵から視線を逸らせた。


あたしの態度も幸平の態度も、理恵の噂を知っていると肯定しているも同然だった。


「理恵は――」


「お願い言わないで!!」


理恵が叫ぶ。


しかし、光男はやめなかった。


「同性愛者だってこと」


光男の言葉に時計の針が止まってしまったような気がした。


周囲は静まり返り、換気扇の音と炎が立ち上る音しか聞こえてこない。


理恵の体が小刻みに震え始めた。


愛の形はそれぞれだ。


誰が誰を好きでも、その感情だけなら罪にはならない。


理恵は悪いことなんてなにもしていない。
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