ファイヤークイズ
光男はどんなことでも飽きっぽく、集中力がなく、授業中にもフラッと教室から出て行ってしまうことがあったからだ。


そんな光男が9年も続けたということは、随分思入れがあったんじゃないだろうか?
だからこうして、宝物として野球ボールが選ばれたのだ。


「どうして高校に入ってから辞めちゃったの?」


あたしはそう聞いていた。


この高校は野球が有名な高校ではない。


どうせ入学するなら、野球が有名な高校に入ればよかったのだ。


9年も続けて来たものを辞めるなんて、きっと勇気が必要だっただろう。


「飽きたからだよ」


光男は返事をするのもめんどくさいという様子で、チッと舌打ちをした。


明らかに何かを隠しているみたいだ。


本当に飽きただけでやめていたのなら、いつまでもボールを持っているはずがなかった。


しかも、これは光男にとって宝物なのだ。
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