ファイヤークイズ
「ただの故障だよ」


光男が理恵から視線を外してそう言った。


「長年続けてきて、肩がもたなくなった。それだけだ」


「でも、まだ若いのに……」


あたしがそう言うと光男は呆れたような笑みになった。


「年齢なんか関係ねぇよ。使い方を間違えたら一発だ」


「へぇ。じゃあ、あんた自分のせいで野球ができなくなったんだぁ?」


理恵がネットリとした口調で聞く。


それはさきほどの光男と同じような口調だった。


理恵を止めようとした矢先、光男は再び舌打ちをして話すタイミングがなくなってしまった。


「でもさ、本当そんな感じだよねぇ。人の忠告を聞かずに無茶して、結果自分に返ってくるなんて、バカみたい!」


理恵の涙はいつの間にか蒸発してしまい、変わりにに大声を上げて笑い出した。


本当に可笑しそうに、ひきつけを起こしてしまいそうな笑い方だ。
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