私の中にキミがいる限り
「ごめんね剛くん」


つよしくんと呼ばれた彼は早足でこちらへ向かってきてくれた。


この人が楓の従兄のようだ。


近くで見ると随分と体格がいいこともわかった。


毎日のトレーニングの成果がありありと見えているような気がした。


「この子が美紗ちゃん?」


剛さんにそう言われ、あたしは背筋をピンッと伸ばした。


「そうだよ。被害者の子」


『被害者』という言い方に、自分が受けているのは立派な犯罪なのだと理解させられてしまう。


警察沙汰にしてしまったら、犯人は逮捕されるんだろうか。


そう考えると一瞬久美の顔が浮かんできた。


久美が犯人だと決まったワケじゃないけれど、一番有力なのは久美しかいない。
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