私の中にキミがいる限り
☆☆☆

いつもの川辺に来ていた。


早退した時、時間を潰すために使っている川辺は、今日もその姿を変えていない。


水面は相変わらず穏やかで、小魚が群れをなして泳いでいる。


その姿を見ながらあたしはベンチに座った。


太陽の光で温められたベンチはとても心地いい。


目を閉じればそのまま眠ってしまいそうだ。


あたしはぼんやりと周囲の様子を見つめていた。


夫婦と思われる老人が散歩をしていて、犬がその横にピッタリと寄り添うようにして歩いている。


小さな子供をベビーカーに乗せたお母さんが歩いている。


その人々の中にミッキーの姿がないかと探している自分に気が付いた。


いつも突然人の前に姿を現すくせに、会いたいときに限ってミッキーはいない。


あたしはため息を吐き出して足元に視線を落とした。


ベンチの下では蟻が行列を作って行く。


その先にあったのは蟻にとっては大きなあめ玉だった。


赤いあめ玉は蟻たちが群がり、真っ黒になりつつある。
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