キミガ ウソヲ ツイタ
陰口にオチなんてあるわけがなく、先輩たちは葉月の気迫に押され、返答に困って口ごもった。

「ないんですか?ほんじゃ私、テレビ見たいんで帰りますわ。しょうもない陰口とか気ぃ悪いし、オチのないくだらん話をダラダラ聞かされんのもキライなんで」

そう言い残して千円札を3枚テーブルの上に置くと、葉月は振り返りもせず店を出た。

その後ろ姿は今まで見てきたどんな女の子より綺麗で凛々しくて、俺とは違って人に嫌われることを恐れず自分の意見をハッキリと言える葉月がとてもかっこよく見えた。

思えば俺が葉月に惹かれたのは、きっとあのときだったんだと思う。


翌日からは先輩たちの葉月に対する風当たりが強くなった。

それでも葉月はまったく気にしていない様子で、相変わらず新人離れしたスピードで正確に仕事をこなし、その上病気で入院した先輩の分の仕事まで引き受けたりしていた。

そのうち佐野も少しずつ効率よく仕事ができるようになり、いつの間にか葉月に負けずとも劣らぬ速さで入力作業をこなすようになった。

どうやら新しいことを覚えるのに少々時間はかかるけれど、覚えながら自分で効率の良いやり方を考えているらしく、それを繰り返すうちにすごい力を身につけていくタイプのようだ。

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