キミガ ウソヲ ツイタ
「えっ……今日?」

葉月は頭をわずかに俺の方に向けて、少し照れくさそうに笑ってうなずいた。

『葉月』という名前だから8月生まれだと勝手に思い込んでいたけれど、嘘などつかなくても葉月も俺と同じ4月生まれだったらしい。

「でも葉月って8月のことだよね?」

「うん……でも私の名前の由来、生まれた月とちゃうねん。私のひいばあちゃんら、 曾孫の私が生まれて来るの楽しみにしとったのに、 二人とも私が生まれる少し前に続けて亡くなって会えんかったんよ。オトンのばあちゃんの名前が『葉子』で、オカンのばあちゃんの名前が『月子』やから、二人の名前を取って『葉月』にしたんやて。だから私、4月生まれやのに『葉月』やねん」

「そうだったんだ……。俺、木村は『葉月』って名前だから8月生まれなんだと思ってた。だから去年の盆休みの前に誘ったんだけど……」

勝手な思い込みを暴露すると、葉月はまた前髪に隠れた額を押し付けるようにして、ドアにもたれた。

「8月生まれと間違われんのはしょっちゅうやし、伊藤くんもそうなんやろなぁとは思てたけど……“私8月生まれちゃうで”って、わざと言わんかったんよ」

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