キミガ ウソヲ ツイタ
「……わざと?」

「うん、わざと。伊藤くんが一緒にお祝いしようて言うてくれてめっちゃ嬉しかったから、8月生まれのふりしてん」

めっちゃ嬉しかったってどういうことだ?

もしかして……もしかすると、葉月も俺のことが好き……?

いや、そんな都合のいいことがあるもんか。

俺のことが好きなら、言葉には出さなくても少しくらいは態度に出るはずだろ?

でも葉月はこれまで俺には素っ気なかったし、目も合わせようとしなかったじゃないか。

自分にとって都合のいいことを期待しないように、ダメだったときのための言い訳を頭の中でいくつも並べ立てていると、葉月が俺のジャケットのすそを軽く握った。

一体何事かと思いながら葉月の方を見ると、少し息を荒くしてつらそうにうなだれている。

「伊藤くん……」

「えっ、何、どうした?」

「私、酔いが回ってきた……。ちょっとヤバイかも……」

「ええっ?!」

葉月の体を支えながら、一旦次の駅で電車を降りた。

ベンチに葉月を座らせて、自販機で買ってきたミネラルウォーターを差し出すと、葉月はそれを受け取りゆっくりと口に含んだ。

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