キミガ ウソヲ ツイタ
葉月の少し気だるそうな横顔や、まだ少し肌寒い春の夜風になびく長い髪、形の良い唇がペットボトルの飲み口に触れるのを見ているだけでドキドキした。

こんなときまで色気が駄々漏れだ。

酔った女の子に襲い掛かるような卑劣な送り狼にだけはならないと心に誓い、隣に座って葉月の背中をさする。

「木村、顔色悪いぞ。大丈夫か?トイレ行く?」

「ううん、少し落ち着いたし大丈夫。ごめんな……ちょっと飲みすぎたみたいやわ」

居酒屋にいたときは自分のことで頭がいっぱいだったけど、あとになってよくよく考えてみると、葉月はかなりの量のビールを飲んでいたように思う。

「木村がこんなに酔うなんて珍しいな」

俺が何気なくそう言うと、葉月はもう一口水を飲んで、また照れくさそうに笑った。

「そうやな……。誕生日のこと、今日こそ伊藤くんにちゃんと話そうて思てたからかも」

「それって、そんなに飲まなきゃ言えないことかな?」

俺が素朴な疑問を口にすると、葉月はうつむいてペットボトルを持っている手元を見つめた。

「だって……恥ずかしいやんか」

葉月の“恥ずかしい”と思うポイントはよくわからないけれど、恥ずかしそうにうつむいている姿はあまりにもかわい過ぎる。

これ、無自覚なんだろうか?

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