キミガ ウソヲ ツイタ
結婚すれば周りに隠す必要もないし、ずっと一緒にいられるのだから浮気を疑うこともなくなるだろう。

『ずっと一緒にいたいから、結婚してついてきて欲しい』

そう言ってプロポーズすれば、きっと葉月も喜んでOKしてくれるはずだ。

そう思っていたのに、葉月は結婚して俺について来ることを望まなかった。

それから数か月後、俺と葉月の形ばかりの短い遠距離恋愛は、俺が連絡の取れない状況にいる間に葉月に新しい男ができたことで幕を閉じることになる。

あとになってから、それは葉月の幼馴染みが仕掛けた嘘だったと知るのだが、そのときはショックのあまり事実を確かめることもしなかった。

そのあとはまた学生時代のような適当で短い付き合いをくりかえし、誰のことも葉月のように本気で好きにはなれないまま月日は過ぎた。

そして入社7年目の夏が終わった頃、なんの因果か、また古巣である本社営業部二課への異動の辞令が出た。

葉月と別れる前まで“元の部署に戻りたい”としつこく出し続けていた転属願いが、そのときになってようやく聞き入れられたのだ。

葉月との関係が終わってしまって3年近くも経ってから、元の部署に戻れと言われても遅すぎる。

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