キミガ ウソヲ ツイタ
絶望的なのはわかっていてもどうしてもあきらめることができず、往生際の悪い俺はなんとか葉月の気を引こうと考え、その手段として昔と変わらず接してくれる佐野にプロポーズした。

俺と佐野は同僚として仲が良いだけでお互いに恋愛感情は一切ないから、プロポーズなんかしたって佐野は即答で断るはずだけど、仲良しの葉月に相談するだろうと計算して、なんの関係もない佐野を巻き込んだ。

だけどそのとき葉月は幼馴染みの男からプロポーズされていて、再会しても自然消滅した言い訳のひとつもしない俺と離れるために、その男と結婚して一緒に大阪に帰るつもりだったらしい。

あのとき佐野と玲司がお節介を焼いてくれなかったら、葉月はもう少しで幼馴染みの男と結婚してしまうところだったのだと思うと、今でも自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。

結果的に佐野と玲司のおかげで葉月との間にあった誤解も解けて、お互いの気持ちを伝え合うことができた。

『俺は今でも、葉月のことがどうしようもないくらい好きだ。葉月じゃなきゃダメなんだ』

俺がそう言うと葉月はうつむいて必死で涙をこらえながら、小さな声で『私、浮気なんかしてへん。志岐のこと、ずっと待ってた』と言った。

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