キミガ ウソヲ ツイタ
「久しぶり、母さん。志岐だよ」

葉月が選んでくれた花を供え、線香に火をつけて、二人並んで手をあわせる。

大学卒業後に祖母の会社に就職したことと、いずれ祖母の会社を継ぐこと。

その会社で出会った葉月と4か月前に結婚したこと、葉月と一緒になってとても幸せなこと。

そして生きているうちに会いたかったと思ったことなどを、心の中で語りかけた。

葉月も俺のとなりで同じように手をあわせ、目を閉じて母に挨拶しているようだ。

「ちゃんと挨拶できた?」

「うん。志岐は?」

「俺もいろいろ話した」

「じゃあ……私もひとつ報告っちゅうか……謝らなあかんことがあんねん」

報告ってなんだ?

葉月は俺に謝らないといけないようなことをしただろうか?

わざわざこんなところでそれを打ち明けようとする葉月の意図がわからず、もしとんでもなく悪い話だったらどうしようかと顔がひきつる。

「えーっと……謝るって何を?」

俺がおそるおそる尋ねると、葉月は一度母の墓石を見てから俺の方を向いて微笑んだ。

「風邪気味って言うたん、嘘やねん」

「なんでまたそんな嘘を……。それにあんなにしんどそうにしてたのに?」

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