キミガ ウソヲ ツイタ
そんな嘘をついて何になるんだろうと首をかしげながら俺がそう言うと、葉月はお腹にそっと手をあてた。

「しんどかったんはホンマやけど、風邪やなくて……ここにな、いてるんやて」

「……えっ?」

葉月の言葉の続きを予想して、俺の鼓動が急激に速くなる。

もし俺の予想通りなら葉月が謝る必要なんてまったくないし、報告と言うより重大発表じゃないか!

急にあたふたし始めた俺を見て、葉月はおかしそうに笑った。

「それってもしかして……」

「うん、志岐と私の赤ちゃん」

「……マジか……!」

「ホンマ。先週の金曜日に仕事終わってから病院行ってきたんよ。昨日6週目に入ったとこで、今年の12月に入ってすぐくらいに生まれるて、先生が言うてはった。せっかくやから志岐の誕生日にお義母さんの前で報告しよう思て、内緒にしててん。心配かけてごめんな」

「いや、奥さんの体調が悪けりゃ夫が心配すんのは当たり前だし、俺は葉月の夫だから葉月が謝ることなんてないけど……でも……ええっ……マジか……」

ここで妊娠の報告をされるとは思ってもみなかったから、俺の頭の中はおもちゃ箱をひっくり返したようにいろんな感情で散らかって、自分が何を言っているのかもよくわからない。

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