キミガ ウソヲ ツイタ
「葉月、眠いなら我慢しないで寝てていいよ」

「うん……。なんか最近やたら眠いからなんでやろって思てたんやけど、妊娠やて気付いたら納得したわ。妊娠したらめっちゃ眠いんやて、前に先輩が言うてた」

「なるほどな。確かに最近よく寝てたから、よほど疲れてるんだなって思ってたよ」

「もうしばらくしたら本格的なつわりが始まって、食べ物の好みが変わったり食べ過ぎたり食べれんようになったり、ずっと船酔いしてるみたいに気分悪かったり吐いたり、急に腹立ったり泣いたりしていろいろ大変らしいわ」

「そうなんだ。やっぱ子どもを産むのって大変なことなんだな。俺もっと家事覚えるよ。もう葉月だけの体じゃないんだから、しんどいときは無理しないで休みな」

「ありがとう、そうする」

そう言って葉月はゆっくりと目を閉じて眠り始めた。

信号待ちで葉月の体に俺の上着をかけてやると、葉月は気持ち良さそうに眠りながら微かに笑みを浮かべた。


その日の夜、二人でベッドに入って横になると、葉月はぴったりと寄り添って俺の胸に何度も頬をすりよせた。

最近ずいぶん素直に甘えてくれるんだなと思っていたけど、これも妊娠しているからなのか、無意識のうちに、子どもが生まれてくる前に俺に目一杯甘えておこうとしているのかも知れない。

< 60 / 61 >

この作品をシェア

pagetop