かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ。昔の話だもの」

沙之くんの隣に腰かけ、にっこりと微笑んで見せると。

「昔の話なんかじゃないんだ」

沙之くんは顔を上げて、私には見せたことのない鋭い眼差しで空を仰ぐ。

「兄貴を裏切って他の男と結婚した女性……もう離婚していて、今はフリーなんだ」

「え……?」

ズキン、と胸の奥が揺さぶられる。

「沙之くんは、その女性のことを知っているの?」

「ついさっきまで、ぼんやりとしか知らなかったよ。でも親父の話を聞いて確信した。兄貴が愛していた女性は、やっぱりあの人だったんだ」

沙之くんは、合わせた両手を額に置いて、苦悶の表情を浮かべる。
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