かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「……その女性は、場当たり的に仕組まれた縁談で、結婚生活がうまくいかなかったみたいだ。数年前に離婚をして、今は子どもとふたりで生活している」

沙之くんがなにを言いたいのか、なにを危惧しているのか、最後まで言われずともわかってしまった。

私自身が、心の奥底で一番不安に感じていたことだから。

「兄貴は、このことをおそらく知らない。知ったらどうするのか、俺は怖い。瑠莉ちゃんを捨てて、あっさりとその女性のところに行っちゃうんじゃないかって」

口に出されて、逃れようのない闇が胸の奥に広がる。

私も、そう思う。きっと颯志くんはその女性のところに行ってしまう。

確かに私は、颯志くんにとって特別な存在なのかもしれない。

けれど、颯志くんが女性として愛しているのは、きっとその人だから。

「私……」

どうしたらいいのだろう。不安がとめどなく押し寄せてきて、涙が滲む。
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