かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「瑠莉は俺の婚約者だ。二度と手を出そうなんて考えるな」

颯志くんはギッと睨みを利かせると、私を連れ立って建物を回り屋敷の出口へと歩き出す。

「颯志くん……! ちょっと待って!」

「話は車の中で聞く」

私に目も合わせぬまま、腕を強く引っ張る。怖い。颯志くん、すごく怒ってる……。

当然だ、自分の婚約者が弟とキスをしようとしていたんだから。もちろん私にはそんなつもりは全くなかったけれど、颯志くんにはそう見えたはず。

革靴でレンガをガツガツと乱暴に踏み鳴らし、颯志くんは私の手を引き続けた。

「お願い! 話を聞いて、颯志くん!」

屋敷の鉄門の前に数台の車が停まっていて、その中に颯志くんの仕事用の黒い高級車も停められていた。そこに向かって足を速め――。

「きゃっ」

突然手前の一台――グレーの自家用車の運転席のドアが開いて、ぶつかりそうになった私たちは慌てて足を止めた。

中から飛び出してきた人影に、颯志くんは驚いたように声を漏らす。
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