かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
颯志くんも、まだ喜美江さんに未練を残しているんじゃないだろうか。

だからこそ、私に出会うまでの颯志くんは、誰とも真剣にお付き合いをせず、フラフラと遊んでいたのだろう。

颯志くんはちゃんと喜美江さんと向き合った方がいい。もう一度、誰の邪魔も入らないふたりきりで。

この先のことを考えてもらうためにも、私はしばらく、颯志くんのそばにいない方がいい。

私がソファから立ち上がると、

「どこへ行く」

颯志くんは私の手首を掴んで、じっと私の顔を見上げた。

「……家に、帰ります」

「まさか、俺が喜美江のところに行くとでも思ってるのか?」

言葉に詰まっていると、颯志くんは「行くわけがないだろ」とため息を交じらせ呟いた。

「お前と一緒だよ、瑠莉。当時俺はまだまだ子どもで、大人に憧れていた。背伸びがしたかったんだ。彼女といると、自分が大人になれたような気がして、誇らしかった」

私の手首を軽く引っ張り、再びソファに座らせると、今度こそ私と向き合って、じっと真摯な眼を向けた。
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