かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「話したいことがあるの。ほんの少しだけでいいから、時間をもらえない?」

颯志くんは、ぐっと唇を強く引き結ぶと、顔をしかめ、迷惑そうに言い放った。

「俺は喜美江さんと話すことはなにもないよ。すまない」

そう言って私の肩を抱くと、喜美江さんの横を素通りしようとする。

思わず彼の腕を掴んで引き留めたのは、喜美江さんではなく私の方だった。

きっと私が隣にいるから、わざと冷たくあしらってくれたのだろう。その気持ちは嬉しいのだけれど……。

「颯志くん……あの……私は、大丈夫ですから、お話を」

「いいんだ瑠莉。前に説明しただろう。もうとっくに終わったんだ」

でも、そんなふうに拒むなんて。喜美江さんの中では、まだ終わっていないのかもしれないのに。

振り返ると、喜美江さんは呆然と立ち竦んでいたが、ハッと我に返ったように顔を上げて、颯志くんへ手を伸ばした。
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