かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「どうしても、あなたが結婚する前に言っておきたいことがあるの!」

そう強い口調で叫ぶと、颯志くんの手首をぐっと掴む。

初めて見る、必死な表情の喜美江さん。

こんなにも真剣な彼女を無視することなんて、私には出来ない。たとえ、自分の首を絞めることになっても。

本当は、颯志くんと喜美江さんをふたりきりにするのは怖いのだけれど……。

「颯志くん、ちゃんと話をしてきてください」

「瑠莉!」

「私……あそこのカフェで休憩していますから」

咄嗟に大きな道路を挟んだ向かいにあるカフェを指さして、私は無理やり笑顔を作る。

厳しい表情で眉をしかめる颯志くん、けれど、どこか困惑しているようにも見える。

「瑠莉。俺は――」

「私たち、もうすぐ結婚するんですから。気になることは全部スッキリさせておいた方がいいですよ」

「瑠莉! 俺は気になることなんてひとつも――」

「ないなら、ちゃんと、喜美江さんと向き合えるでしょ?」
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