かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
店に入ろうとした、そのとき。

「瑠莉ちゃん」

不意に名前を呼ばれて、私は振り返った。

そこには、キャップとサングラスとマスクで顔を隠した男性。

ぎょっとして警戒すると、その男性はサングラスをちらりと下へずらして「俺だよ」とあどけない笑顔を見せた。

「沙之くん……!? どうしてそんな恰好を……!」

「変装。効果あった?」

沙之くんは悪戯っぽく笑うと、私の右手首を掴み、交差点とは反対に向かって歩き始めた。

「変装って、どうして――」

「だって、兄貴に見つかると怒られちゃうだろ?」

サングラスをジャケットのポケットへ押し込んで、沙之くんはウインクする。
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