かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
道路の反対側にいる颯志くんと喜美江さんに視線を向けるけれど、すっかり遠くなってしまって、ここからは表情すら見えない。

颯志くんは、結局誰を愛しているの?

お父さまのご病気とか、立場とか、そういうのを抜きにして、いったい誰と一緒になりたいの?

その問いかけには、私自身も目を逸らし続けてきた。

「瑠莉ちゃんは、もう少し自分を大切にした方がいいよ。兄貴のいいなりになんかならないで、さ」

私の両肩に手を置いて、沙之くんが向き直る。

「一緒に逃げよう。兄貴に、やすやすと手に入らない女なんだって、見せつけてやろうよ」

「沙之くん……」

胸の前に置いた手が、不安でカタカタ震え始める。

私はどうしたら颯志くんに、ひとりの女性として愛してもらえるのだろう。

沙之くんの真摯な眼差しにかき乱されて、胸の中にぐるぐると葛藤が渦巻くのだった。
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