かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
そのことか、と嘆息する。当時、神楽邸に働きに来ていた喜美江と顔を合わせるのが気まずくて、さんざん避けた挙句、ひとり暮らしを始めてしまった。

だが、あくまで年齢的に自立しなければと思ったからで、彼女のせいではない。

どちらかといえば、その頃、告白してきた瑠莉を振ってしまったという罪の意識の方が強かった。きっかけがあるとしたら、そちらだ。

俺のことを一途に想い続けてくれた純真な女の子を、傷つけてしまったのだから。

「たまたまだ。そろそろ自立しようと思ってたんだよ」

「……ずっと申し訳ないと思っていたの。私のせいで、あなたの家まで奪ってしまって」

「考えすぎだ。それに、ひとり暮らしは快適だぞ」

「……いくらでも女性を連れ込めるから?」

彼女のひと言にカチンときた。あんたがそれを言うか。

「ごめんなさい。でも、沙之くんから聞いちゃって。まともに女性と付き合わず、フラフラ遊んでるって。きっと私が傷つけたせいよね。本当にごめんなさい」

喜美江が深々と頭を下げる。まったく、沙之は余計なことばかり吹き込んで。
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