かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「沙之!」

信号が青になり、俺は人混みを避けながら横断歩道を走った。

瑠莉の指定したカフェに辿り着き入り口のドアを開けると、客の数はまばらで、中に瑠莉の姿はなかった。

「瑠莉……! くそ、どこに――」

「颯志くん! あそこ」

追いかけてきた喜美江が、歩道の先を指さした。そこに、白いカーディガンと黒いワンピースのうしろ姿――瑠莉が、キャップを被った男に手を引かれ、車に乗せられようとしている。

「瑠莉!」

焦った俺は人混みをかき分け、全速力で瑠莉の元へ走った。
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