かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「俺と一緒に、兄貴から逃げようよ」
そう言ってくれた沙之くんだったけれど。
「ごめんなさい、私、颯志くんを困らせるようなこと、できないよ」
沙之くんの腕を振り払うと、元来た道を戻ろうとした。
「待って!」
再び私の両肩を掴み、自分の方に向き直らせた沙之くんは、焦燥した瞳で私の顔を覗き込む。
「兄貴がいままでどれだけの女性をとっかえひっかえしてきたか、見てないからそんなことが言えるんだ! 一緒になったとしても、兄貴にいいように使われるだけだぞ!」
「だとしても――」
いつの間にか私まで声に熱がこもり、瞳には涙が浮かんでいた。