かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「思った以上に、瑠莉ちゃんは筋金入りの兄貴のしもべみたいだ」

「なに言って――」

「喜美江さん」

沙之くんの視線が、背後の喜美江さんへと向かう。

喜美江さんは、わずかに息を切らしながらも、少し遅れて私たちの元へ追いついた。

「話は済んだの? 兄貴を射止めることに成功した?」

「……沙之くんは、誤解しているわ。私は、颯志くんに未練があってここに来たんじゃない。背中を押すためにきたのよ」

「……なんだ。どいつもこいつも、中途半端にいい人ぶりやがって」

沙之くんは、優しかった彼とは思えない汚い言葉を吐き捨てて、キャップを再び深くまでかぶった。
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