かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「なにがしたいんだ、沙之。どうして瑠莉に絡む」

「別に瑠莉ちゃんになにがしたいわけじゃないよ。兄貴が不幸になればいいと思っているだけだ」

ぞっとするほど冷ややかな眼差しで沙之くんは颯志くんを睨む。

どういうこと? 沙之くんは、颯志くんのことが嫌いなの?

困惑する私たちを尻目に、沙之くんは停めてあった車の運転席へ乗り込む。

「待て! 沙之!」

颯志くんが運転席へ追いかけていくと、沙之くんは面倒くさそうにガラスドアを開けた。

「文句があるなら、直接俺に言え! 瑠莉や喜美江を巻き込むんじゃない!」

荒い声でそう告げると、沙之くんはキャップを外し、がしがしと髪をひっかきまわして苛立ちをあらわにした。

「うるさいよ!」

彼らしからぬ乱暴な台詞に、私は殴られたような衝撃を覚える。

喜美江さんや颯志くんでさえ、驚きに言葉を詰まらせた。

が、もしかしたら、一番驚いたのは沙之くん自身だったのかもしれない。ギリッと歯がみして、目を逸らす。
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