かりそめ婚!?～俺様御曹司の溺愛が止まりません

「……俺のことなんか、眼中にもないくせに」

呟いた最後のひと言に、ただの嫌悪感だけではない、なにか複雑な、別の感情があるような気がして……。

「沙之……？」

答えあぐねる颯志くんを前に、沙之くんは車のエンジンをかける。

「どういうことだ、沙之！？」

車が前方に動き出し、プッと短いクラクションが鳴った。

咄嗟に一歩下がった颯志くんを置き去りにして、沙之くんの運転する車が走り去る。

私たちは、車の姿が見えなくなるまで呆然と道の先を見つめていた。

颯志くんは肩を落とし、一度ふぅと短く息をつくと、

「……瑠莉。大丈夫だったか。なにかされなかったか」

道路際から私たちのいる歩道まで駆け足で戻ってきた。

「はい。大丈夫です。でも、いったいどうして……」